matsubockrin 子どもの本棚

親子で読んだおすすめの絵本・児童書を紹介します。

ふたりはともだち

がまくんとかえるくんの小さな友情のお話が5つ入った短編集です。

教科書に取り上げられている『おてがみ』のお話が入っているのが『ふたりはともだち』で、他に『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』の3冊があります。

どのお話も、がまくんとかえるくんがゆったりと丁寧に生きていて、二人の関わり方もすごくシンプルです。

相手がいると楽しいし、元気がなければ悲しいし、おいしいものがあったら一緒に食べたいのです。

好きだから一緒にいたい、好きだから悲しませたくないという思いは、おなかが空いたからごはんを食べて、眠いからねる、といった、がまくんとかえるくんの生き方そのもの。

だからこそ、子どもたちはがまくんとかえるくんの気持ちを近いところで理解でき、共感もできるのだろうと思います。

その他いろいろな思いを持つ大人は、そのシンプルな思いに、気づかされたり、羨んだりしてしまいます。


ふたりはともだち
アーノルド・ローベル:作 / 三木 卓:訳
文化出版局

エルマーのぼうけん

言葉を話す不思議な猫から、どうぶつ島に囚われたりゅうの話を聞いたエルマーは、かわいそうなりゅうを助けに行くことにしました。そのりゅうはまだ子どもで、うっかりどうぶつ島に落ちてしまったところを動物たちに捕まってしまい、囚われて、川の橋渡しとして働かされていました。

エルマーはたった一人で船に忍び込んで島へ渡り、猫の話を思い出しながら歩きます。途中、侵入者を嫌う動物たちから何度も脅されますが、その度に素晴らしい機転でかわし、りゅうを助けに進みます。

 

小さな子が読む、初めての冒険の物語にぴったりです!不思議な猫から聞く不思議などうぶつ島やりゅうの話は、日常とかけ離れたファンタジーの世界に、子どもたちをすぐに連れて来てくれます。

また、エルマーが猫から言われて準備した持ち物は、輪ゴム1箱と棒付きキャンデー2ダース、虫めがね6つなど、どれも冒険に関係ないような物ばかりです。

でもどうぶつ島に着くと、それらがことごとく役に立ちます。

いわゆる“伏線回収”のように、持ち物とどうぶつ島での出来事がつながって解決し、「なるほど!」と納得してしまいます。

そして表紙、裏表紙の後ろに島の地図が載っていて、場所の名前や遭遇した動物などが描かれているのですが、お話を読みながら地図と照らし合わせると、エルマーがどうやって島を進んで行ったのかがわかります。

それがまさに探検地図を見ながら進んでいるようで、ワクワク感を大きくしてくれます。

 

文字が大きくひらがなも多いので、読み聞かせはもちろん、字を読む事に慣れてきた子どもが、自分で読むのにちょうどいいと思います。

娘が6歳、息子が4歳の時に読み聞かせをしましたが、娘はすぐに自分で読み始め、息子も一人で読んでいました。絵本ではない字だけの本を読むのは初めてだったので、とても驚きました。児童書を自分で読むきっかけと、読めるという自信になった貴重な一冊です。


エルマーのぼうけん
ルース・スタイルス・ガネット:作 / ルース・クリスマン・ガネット:絵 / 渡辺茂男:訳
福音館書店

かいじゅうたちのいるところ

いたずらっこのマックスは、かいじゅうみたいに大暴れするので、お母さんに叱られて、寝室に閉じ込められてしまいます。すると突然床から木が生えて森になり、波が打ち寄せて船が現れると、マックスは長い航海に出てかいじゅうたちのいる所に辿り着きます。

かいじゅうたちはマックスを見つけると大きな声を出して怖がらせますが、マックスが怒鳴り、睨み付けると恐れ入ってしまい、マックスを自分たちの王様にして、一緒に遊ぶことにしました。

 

今はあまりないかもしれませんが、昔は叱られるとどこかに閉じ込められる、という事がよくあったと思います。そういえば私も何度か押入れに閉じ込められました。

真っ暗でひとりぼっちで、怖くて寂しいのですが、だからこそ空想の世界が広がります。

何も見えないから見えてくる物、もしこんな事があったら、それがこうなったら…、時間はあるので、心ゆくまで頭の中の物語を発展させる事ができます。

マックスが訪れたかいじゅうたちのいる所も、閉じ込められた寝室にあったのかもしれません。暗くて怖いからおばけやかいじゅうが出そうだけれど、もし友達になったらどんな事をするだろうか?どんな事をして遊ぼうか?あれこれ思いを巡らせて、自分の世界に入り込みます。

でもふと我に帰る瞬間が訪れて、やっぱりここから出たいな、おなかが空いたなと寂しくなります。

 

かいじゅうたちのいる所から寝室に戻ったマックスは、あたたかいごはんが置いてある事に気がつきます。戻る場所があり、受け入れられている安心感に、マックスも絵本を読む子どもたちも、ホッとするのではないでしょうか。


かいじゅうたちのいるところ
モーリス・センダック:作/神宮輝夫:訳
冨山房

からすのパンやさん

いずみがもりの木の上に、カラスのパンやさんがありました。

夫婦でお店を切り盛りしていましたが、4羽のかわいい子どもが生まれてからは、お世話で仕事もままならず、パンを焦がしたり、お店が汚れたりで、すっかりお客さんがいなくなってしまいました。

貧乏になったカラス家の子ども達が、おやつに出来損ないのパンを食べていると、周りの子ども達が「おいしそう!」と興味津々。

パンを買いに来る小さなお客さん達の為に、カラス一家は知恵をしぼって、たくさんの種類のパンを作ります。

 

かこさとしさんの絵本には、細かな物や人がたくさん出てきます。

『だるまちゃんとてんぐちゃん』では、だるまちゃんの為に家中の帽子や履物を広げて探したり、『からすのぱんやさん』では、様々な形のパンが所狭しと並びます。

どれも見開き1ページにどーん!と並んでいるので圧巻です。

絵本を見る子ども達は、目移りしながら面白い物を探します。かえるパン、サボテンパン、おかまパン、てんぐパンなどなど。ダイヤル式電話やブラウン管テレビのパンなど、昭和的なラインナップに母も見入ってしまいます。

 

そして噂の広がったパンやさんにたくさんのカラスが押し寄せますが、その描写も細かくて面白い!老若男女、様々な職業とファッションセンス、良いカラス、怪しいカラスと様々です。なぜか花嫁さんまで並んでいます。

そんな、様々な物の表情や背景がたくさんの想像を生み出して、子どもも大人も笑いながらサイドストーリーを考えます。

かこさとしさんがあとがきで書いていますが、そういうカラス一羽一羽のストーリーを、読み手が独自に想像して楽しめる事が、かこさんの魅力の一つかなと思います。


からすのパンやさん
かこさとし:作/絵
偕成社

11ぴきのねこ

懐かしい『11ぴきのねこ』のお話です。子どもの頃、11匹のねこ達のとぼけた顔がかわいくて大好きでした。が、「なぜ11ぴきなんだろう?」と思っていました。

でもきっと、とらねこ大将1匹ではダメで、大将の他3匹くらいでも面白くなくて、その他10匹のねこ達がいるからこそ面白くなるのかなと思います。11匹がみんな腹ペコで、みんなで遠くの海にいる大きな魚を捕まえる野望を持ち、作戦をたて、何度も失敗をする姿は、なぜかとてもユーモラスです。

そしてこのねこ達の一番の魅力は、大きすぎる野望を持ったり、ダメと言われた事をみんながちょっとやってしまう所。いい子でないのが魅力なのです。しかも11匹全員。

それで困った事になっても、みんなであっと驚く知恵を出し合い解決します。

みんなで失敗、みんなで解決の面白さは、やっぱり11匹いるからこそ!なのですね。


11ぴきのねこ
馬場のぼる:作
こぐま社

14ひきのひっこし

お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんと10匹の子どもたち、合わせて14匹のねずみ一家の引っ越しです。新しい家を探しに森の奥へと進みますが、途中天敵のいたちに出くわしたり、流れの速い川を渡ったりと危機を乗り越えて、ついに素敵な木をみつけてみんなで家を作ります。

 

ねずみ達がとても健気でかわいくて、時々クスっと笑ってしまいます。

人間と同じように服を着て、同じように失敗したり助けたりしている様子が丁寧に描かれているので、とても身近な家族のお話に思えます。

昔は当たり前だった、おじいちゃんおばあちゃんがいる生活、たくさんいる兄弟は、ひと昔前の大家族を再現しているのかもしれません。さらに自給自足で生活をする様子も、生活の原点を見せてくれています。

 

ねずみそれぞれが困っていたり頑張っていたりとストーリーを持っているので、お話の他にもたくさんの事を想像して楽しめます。人間と同じように生きるねずみの世界に入り込み、大家族の中でのあたたかい暮らしを想像し、いつの間にか自分もねずみサイズの視点で見ています。小さい生き物は世界がこんな風に見えているのか、こんな風に生活しているのかと、大人も子どもも際限なく想像の世界に入り込んでしまいます。


14ひきのひっこし
いわむら かずお:作
童心社

だるまちゃんとてんぐちゃん

小さいだるまちゃんは、お友達のてんぐちゃんが持っている物が何でも欲しくなってしまいます。うちわ、ぼうし、はきもの、そして長いはなも!

その度にだるまちゃんのお父さんは、家にある物をたくさん出して来て、気に入る物を探してくれます。ぴったりの物はないけれど、だるまちゃんは素敵なアイデアで、てんぐちゃんと同じような物を作ります。

 

子どもの頃は、たくさん出された団扇や帽子一つひとつが面白くて、「これはどんな格好に使うんだろう?」と想像したりしていましたが、大人になってからは、ただただ、だるまちゃんの「あれほしい」に付き合ってあげるお父さんがすごい!と思ってしまいます。しかも最後はおじいちゃんおばあちゃんも揃って家族総出!

あんな風に、全身で子どもの思いを受け止めてくれる家族がいる事に、幸せなだるまちゃんは気づいているのでしょうか??

子どもの頃には気づかなかったけど、親になってから見ると、愛されだるまちゃんの幸せなお話なんだなと思います。そして、それは子育てで重要な要素だなと、つくづく思います。


だるまちゃんとてんぐちゃん
かこさとし:作/絵
福音館書店

ノンタン ぶらんこのせて

ノンタンシリーズの第1作目です。

子どもたちがみんなノンタン大好きなのは、きっとノンタンが子どもそのものだから!楽しいことは楽しいし、やりたいようにやりたいし、まわりの事はおかまいなし。でもそれでちょっと失敗してしまい、「あれ?」と気がつきます。

ぶらんこに乗ったノンタンも、楽しくてなかなか終われません。後ろにお友達が並んでいても気にしません。そこで、実は3までしか数えられないノンタンと一緒に、みんなで楽しく10を数えて交替します。しかもかわいいおまけつきです。

 

「かわってー」「まだまだー」のやり取りは、幼児期の遊びでは本当によくあります。社会性を教える絶好の場ではありますが、子ども本人が必要性を感じていないので、なかなかの難題です。

そんな中、ノンタンと他のお友達の様子を外から見る事で、自分以外にも気がつきます。楽しそうなノンタンと、困っているお友達。

すると実際の場面でも「必要性」はわかってくれます。交替できるかどうかは別ですが…。

ノンタンシリーズは、そんな子育ての小さなきっかけをくれる本です。


ノンタンぶらんこのせて
キヨノサチコ:作
偕成社

ととけっこう よがあけた

わらべ歌を元にした絵本です。「ととけっこう よがあけた」「まめでっぽう おきてきな」とにわとりがみんなを起こしてまわり、ページをめくるとみんなが起きて来ます。

巻末に楽譜もついていますが、「ととけっこう~」と口に出すと、ぴったりのリズムと抑揚が自然と出てくると思います。それくらい馴染みやすく、やさしい歌です。

 

保育園、図書館、支援センターなどでの赤ちゃん向けの読み聞かせには、必ず登場する本でした。絵本を使った親子のコミュニケーションの取り方を、たくさん教えてもらった気がします。

「ととけっこう」と呼びかけると笑顔で返してくれて、赤ちゃんながらも気持ちが通じてるな〜と幸せな気持ちになります。


ととけっこう よがあけた
こばやし えみこ:案/ましま せつこ:絵
こぐま社

はらぺこあおむし

本物のアオムシを見つけたら飛び上がって驚くのに、このあおむしを見つけるとうれしくなって手に取ります。最近はグッズも増えて、世界一有名で愛されているあおむしです。 

絵の具を塗った薄い紙を何枚も重ねて描かれるエリック・カールの絵は、一目ですぐ分かるほど独特で美しく、もはや発明品と思えます。

月曜日から徐々に食べ物が増えていく階段状のページや、食べられた跡のパンチ穴など、色彩だけでなく紙面の工夫も施されていて、視覚と仕掛け両方の魅力を併せ持つ絵本です。

 

息子が保育園1歳児クラスの時、先生が歌付きで読み聞かせをしていて、「歌があるんだ!」と驚きました。あおむしが順に食べて行く様子をのっそりのっそり歌っていて、この絵本にぴったりの歌でした。4歳児クラスの娘も「しってるよ!」とズイズイやって来て、「げっつよーび~」と歌って教えてくれました。

歌のおかげか、1歳だった息子はよく一人でこの本を開いていました。

赤ちゃんでも十分楽しめる本なので、ボードブック版がおすすめです。 


はらぺこあおむし
エリック・カール:作/もり ひさし:訳
偕成社