matsubockrin 子どもの本棚

親子で読んだおすすめの絵本・児童書を紹介します。

もしもあったら何をしよう?『おおきな きが ほしい』

庭に大きな木があったら、はしごをかけて登っていって、自分だけの小屋を作りたいな。台所でホットケーキが焼けるし、高い所は見晴らしもよくて、夏は涼しいかもしれない。秋は落ち葉の掃除を鳥が手伝ってくれるかもしれないし、冬はリスがくるみを持って遊びに来てくれるかも。

そんな「もしも」の子どもの夢が、たくさんつまったかわいいお話です。

 

男の子が大きな木に登って行く所から、ページの向きが変わります。

左右の見開きページから上下の見開きになって、ページをめくる度に上へ上へと登って行きます。

登った先には空の広がりがあり、下を見れば小さくなった家とお母さんがいます。

まるで本当に大きな木に登ったかのような気分になり、自分だけの木の家では何をしようか考えるだけでワクワクします。

空想の中で遊ぶ楽しさを、工夫いっぱいに見せてくれる本です。


おおきなきがほしい
佐藤さとる:文/村上勉:絵
偕成社

やってみたい!が いっぱい詰まった『ひとまねこざると きいろいぼうし』

今では“おさるのジョージ”として有名な、ひとまねこざるの1作目です。黄色い帽子のおじさんに連れられて、アフリカから街へやって来たジョージが、次から次へと騒動を起こします。

船ではカモメの真似をして飛んでみたら海へ落っこちて、おじさんの家では電話がおもしろくて消防車を呼んでしまい、怒られて牢屋に入れられてしまったけれど窓から抜け出し、電話線を伝って風船の束で空を飛んで行きます。

目の前の事、目に見えた事を何でもやっちゃう。誰かに似ていると思ったら…うちの子です。

さすがにカモメの真似をして飛んだりはしないけど、気になったものについつい手を出してやってみたくなっちゃうのは、子どもたちにそっくりです。

お話の展開も早く、短い話の中でくるくる場面が変わります。きっとジョージや子どもたちの興味も同じで、目に映る事や耳に聞こえる事全てがおもしろく、止まってなんかいられないのでしょう。

子どもたちは何でもやってしまうジョージを羨望の眼差しで見て、大人たちは何でも受け入れる黄色い帽子のおじさんに、尊敬の眼差しを向けずにはいられません。


ひとまねこざると きいろいぼうし
H.A.レイ:作 / 光吉夏弥:訳
岩波書店

古き良き昔話『3びきのくま』

女の子が森の中で迷子になってしまいました。帰り道をいくら探してもみつかりません。すると一軒の小さな家をみつけました。中に入ってみると、テーブルの上には大きいスープ、中くらいのスープ、小さいスープが置いてありました。女の子は小さいスープを食べ、小さいイスに座って、小さいベッドで眠ってしまいました。でもそこはクマの親子の家だったのです。

 

緑の表紙に3匹のクマが並ぶ姿はインパクトがあり、中を開くと挿絵がまた迫力満点です。子どもの頃はクマがちょっとリアルで怖かったけど、絵本全体から漂う外国の雰囲気や、心地好さそうな家の中が、なんとなく素敵だなと思っていました。

物語は非常に素朴で、大・中・小の物の比較が、とてもかわいらしく、リズムよく繰り返されます。昔話では3回の繰り返しがとても多く、3人兄弟の末っ子や、3つの願い事など、3つ目でお話が展開していくことが多いのですが、『3びきのくま』は、まさにその馴染みのある展開です。だからこそ、クマが怖かろうとも、異国情緒が溢れていようとも、子どもは安心してお話の中に入っていけるのだと思います。

 

大人になってから娘の為に本を買い、よくよく見ると「トルストイ作」となっていました。あのトルストイ? 確かにクマの名前はミハイル、ナスターシャ、ミシュートカとロシア風です。

ロシアに伝わる昔話をトルストイが再話したのかなと思っていたら、もとはイギリスに古くから伝わる民話を、トルストイが翻案したのだそうです。

図書館などで注意して探してみると、確かにイギリス版のお話もありました。

日本ではこのトルストイ版が有名ですが、ちょっと不思議なルートです。


3びきのくま
トルストイ:文/バスネツォフ:絵/おがさわらとよき:訳
福音館書店

初めての 絵探し絵本『きんぎょが にげた』

大きな金魚鉢から、きんぎょが一匹逃げました。カーテン、お花、キャンディなど、日常にある物の中に逃げ込んで、どこへ行ったか探します。小さな子ども向けの、かわいい絵探し絵本です。

 

五味太郎さん独特の色彩が紙面いっぱいに広がっていて、眺めているのも楽しくなります。初めは似たような形、似たような色から探していきますが、そのうち部屋の風景の一部になっていたり、たくさんのおもちゃの一つになっていたりと、だんだん物に紛れていくと、意外と大人も迷います。

色とりどりの物の中に入っても、きんぎょが浮かずに馴染んでいるのは、紙面全部の色のバランスがいいからなんだろうなと思います。安定の色合いを、安心して子どもに見せられ、かつ、ちょっぴり目の錯覚なども楽しむ事が出来る、かわいいトリック本です。


きんぎょが にげた
五味太郎:作
福音館書店

あかちゃんだって つまんでパク!『くだもの』

ぶどう、なし、りんごなど、普段目にする果物が、本物そっくり、それ以上に美味しそうに描かれています。果物まるごと描かれていて、次に食べやすくむかれた形で「さあ どうぞ」と差し出されます。思わず「ありがとう」と受け取って食べたくなるくらい美味しそう!

1歳前後の娘も息子も、姪っ子も友人の子も、みんなつまんでパクッもぐもぐもぐ…と食べるまねをしていました。

だんだん食べられる物が増えて食が広がり、果物もたくさん食べて、美味しいものがわかって来たころ。

食への興味もうれしいですが、それより何より、本の中の果物を口に入れるごっこ遊びを自然としたこと、もぐもぐしながら「おいしいね」と笑い会えた瞬間、鳥肌が立つくらいうれしくなりました。

母がぶどうをつまんで「さあ どうぞ」と渡すと、きちんと受け取ってお口にパク!

もぐもぐする子どもたちを見ていると、あかちゃんにも「するつもり」でごっこ遊びを楽しむ能力が備わっているんだなあと感動します。

そういう子どもたちの潜在的な能力を、絵だけで自然と引き出してしまう本だと思います。


くだもの
平山和子:作
福音館書店

ちょっとかして!『ねずみくんのチョッキ』

おかあさんが編んでくれた赤いチョッキを、うれしそうに着るねずみくん。素敵なチョッキに「ちょっときせてよ」とお友達が次々に着ていくと…。

 

シンプルなモノクロの絵に、ねずみくんのチョッキだけが赤く目立っています。小さなねずみくんの着ていた小さなチョッキが、アヒル、サル、ライオンと、着る動物が変わるたびに、チョッキもすこしずつ変化します。

繰り返しの楽しさと、「ちょっとかして」という気持ちの共感、チョッキを借りて着た動物たちが、みんな誇らしげな表情なのも楽しくなります。

 

大きくなったモチーフは、たいてい元に戻ることが多いのですが、ねずみくんのチョッキはそのままです。

だけど最後のちょっとひねった結末が、クスリと笑えて、なんだかお洒落だなあと思います^^


ねずみくんのチョッキ
なかえよしを:作/上野紀子:絵
ポプラ社

お姉ちゃんってこんな気持ち『あさえと ちいさい いもうと』

あさえにはちいさい妹がいます。とことこ歩く、かわいいあやちゃんです。

お母さんが出かけてしまって、あさえはあやちゃんと二人で外で遊ぶことにしました。道路にチョークで線路を描いてあげると、あやちゃんは大喜びです。もっともっと喜ばせたくて、あさえが夢中で線路を描いていると、いつの間にかあやちゃんがいなくなっていました!

 

子どもの頃初めて読んだ時、自分の事が書かれているのかと思うくらい、びっくりしたのを覚えています。自分がちょうどあさえと同じくらいの頃、ちょうどあやちゃんくらいの妹がいて、薄茶色の柔らかい髪の毛や、水玉模様のかわいい服など、本当にそっくりでした。

そして本当に妹って、ぱっといなくなるんです。

心臓が飛び出る程ドキドキして、「何かあったらどうしよう!」と探し回るけど、どうしてそういう時って、誰もかれもが妹みたいに見えるのでしょうか?

そしてそんなお姉ちゃんの心配をよそに、どうして妹ってあんなにのんきなんでしょうか??

あさえのドキドキが手に取るようにわかり、今も昔も胸が痛みます。

そして最後の場面では、あさえと一緒に緊張の糸が切れて、涙ぐんでしまいます。

小さくても「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」を一生懸命がんばる子どもの心を、すぐ近くで見てくれて、寄り添ってくれる、やさしい絵本です。


あさえと ちいさい いもうと
筒井頼子:作/林明子:絵
福音館書店

幸せな変身!『どろんこハリー』

黒いブチのある白い犬のハリーは、お風呂が大嫌い。ある日、お風呂にお湯を入れる音がしてきたので、急いでブラシを庭に隠して逃げ出しました。

街に出たハリーは、工事現場で遊び、機関車の橋の上でススだらけになり、石炭トラックの上で遊んで真っ黒になりました。今では白いブチのある黒い犬です。

遊び疲れて家に帰ると、家の人は誰もこの真っ黒な犬がハリーと気づきません。

逆立ちしたり、宙返りしたり、いつもの芸をたくさんしても全然だめ。ハリーは悲しくなってとぼとぼ外へ出ようとしますが、突然、庭に隠したお風呂のブラシを思い出します!

 

古今東西、老若男女、変身するお話はみんな大好きですね。仮面ライダープリキュア、シンデレラや美女と野獣もそうですし、水戸黄門も立場が変わるという意味では変身の部類?

ギャップが大きければ大きいほど爽快感がありますが、このどろんこハリーの変身も、小さな子どもにとっては大きな変身なのかなと思います。

 

だって真っ黒になったとは言え、家族が誰も自分に気がつかないなんて、悲しすぎます。家族との幸せなコミュニケーションだった「芸」も、自分だと気づいてくれる方法にならないなんて。挙げ句の果てに、家に入れないなんて…。

遊んで帰ったハリーの境遇が気の毒すぎて、子どもだって同情します。

息子は何度も「ハリーなのにね。」とつぶやいていました。

 

でもそこで必殺技のお風呂が出てきます!

家を出なければならなかった、かわいそうなハリーを思うと、変身後の爽快感は抜群です。「よその犬」から「うちの犬」への変身は、子どもも知っている幸せの大変身だからです。


どろんこハリー
ジーン・ジオン:文 / マーガレット・ブロイ・グレアム:絵 / わたなべしげお:訳
福音館書店

他の子とは違う?『スイミー』

小さな魚のスイミーは、たくさんの兄弟と暮らしています。みんな赤いのに、スイミーだけ真っ黒。でも泳ぐのがとても早かったので、スイミーだけマグロに食べられずに逃げました。

ひとりぼっちで泳いでいると、今まで見たこともなかった海の景色に出会います。大きな伊勢海老や昆布とわかめの林、長い長いうなぎなど。そしてスイミーと同じような、小さな赤い魚の群れに出会います。大きな魚を怖がっている仲間たちに、スイミーはあるアイデアを提案します。今度こそ大きな魚に負けないように、みんなで力を合わせる方法です。

 

自分の中の遠い記憶では、スイミーは一匹だけみんなと違って真っ黒で、でもそれを生かして活躍する、というお話だったのですが、大人になって読んでみると、ひとりぼっちになってから海の中をさまよって、色々な生き物に出会う部分が数ページ続くことに驚きました。

親になり子どもを育てる中で、周りとの違いは無意識に意識していることも多く、子どもが赤ちゃんの頃から、出来ることが他の子よりも遅いような気がしたり、違うことをしているような気がしたりしていました。

娘は早生まれなので、なおさら、母である私が気にしすぎていたのかもしれません。

 

スイミーを見ると、そんな他の子とは違う、たった一人の我が子のように思えます。周りと違くて、いい所も光って見えて、でもとても心配。そのスイミーが一人で海を泳いで、今まで知らなかった世界を見て、気づき、新しいコミュニティーに入って行くという、魚も人間も同じ「子どもの独り立ち」が描かれているように思えました。

レオニがページを多く割いたのも、そこが重要だったからなのかな、と。

親に出来ることは、たくさんの世界を見せて外へ送り出し、子どもを信じてあげることくらいなのかなと、寂しいような、でも頼もしいような、ちょっと複雑な気持ちになります…。


スイミー -ちいさな かしこい さかなの はなし
レオ=レオニ:作 / 谷川俊太郎:訳
好学社

なぞなぞのすきな女の子

子どもってなぞなぞが大好きですよね。自分で答えるのも好きだけど、問題を出すのも大好き!ひとつ覚えると問題を出して、「う~ん」と考えている顔を見て満足そう。「それってダジャレじゃ…」って答えにも、得意になって教えてくれるのでおもしろいです^^

 

なぞなぞのすきな女の子も、あんまりなぞなぞを出すのでお母さんがお手上げになり、一緒になぞなぞをしてくれる人を探しに出かけます。

途中おなかを空かせたおおかみに出会うのですが、女の子は得意のなぞなぞを出し、おおかみは考え込んでしまいます。

 

おまぬけおおかみと、機転の利いた女の子のやり取りがユーモラスで、子ども達は大喜び。最後はまるで昔話にあるようなぴしゃりとした終わり方で、みんな安心。よかったね!と笑顔です。


なぞなぞのすきな女の子
松岡享子:作/大杜玲子:絵
学研プラス