matsubockrin 子どもの本棚

親子で読んだおすすめの絵本・児童書を紹介します。

古き良き昔話『3びきのくま』

女の子が森の中で迷子になってしまいました。帰り道をいくら探してもみつかりません。すると一軒の小さな家をみつけました。中に入ってみると、テーブルの上には大きいスープ、中くらいのスープ、小さいスープが置いてありました。女の子は小さいスープを食べ、小さいイスに座って、小さいベッドで眠ってしまいました。でもそこはクマの親子の家だったのです。

 

緑の表紙に3匹のクマが並ぶ姿はインパクトがあり、中を開くと挿絵がまた迫力満点です。子どもの頃はクマがちょっとリアルで怖かったけど、絵本全体から漂う外国の雰囲気や、心地好さそうな家の中が、なんとなく素敵だなと思っていました。

物語は非常に素朴で、大・中・小の物の比較が、とてもかわいらしく、リズムよく繰り返されます。昔話では3回の繰り返しがとても多く、3人兄弟の末っ子や、3つの願い事など、3つ目でお話が展開していくことが多いのですが、『3びきのくま』は、まさにその馴染みのある展開です。だからこそ、クマが怖かろうとも、異国情緒が溢れていようとも、子どもは安心してお話の中に入っていけるのだと思います。

 

大人になってから娘の為に本を買い、よくよく見ると「トルストイ作」となっていました。あのトルストイ? 確かにクマの名前はミハイル、ナスターシャ、ミシュートカとロシア風です。

ロシアに伝わる昔話をトルストイが再話したのかなと思っていたら、もとはイギリスに古くから伝わる民話を、トルストイが翻案したのだそうです。

図書館などで注意して探してみると、確かにイギリス版のお話もありました。

日本ではこのトルストイ版が有名ですが、ちょっと不思議なルートです。


3びきのくま
トルストイ:文/バスネツォフ:絵/おがさわらとよき:訳
福音館書店