友情だけじゃない『アレクサンダとぜんまいねずみ』
人間に嫌われ、いつも追いかけられているねずみのアレクサンダは、ぜんまい仕掛けのねずみウイリーに出会い、友達になります。ウイリーは大好きだけど、人間に可愛がられる彼が羨ましく、自分もぜんまいねずみになりたいと願います。
ある日アレクサンダは、庭の隅にいる魔法のトカゲの話を聞きます。満月の夜、紫の小石を持っていくと、生き物を他の生き物に変えてくれるのだそうです。
アレクサンダはぜんまいねずみになりたくて、紫の小石を探しますが、見つかりません。すると、物置の隅で箱に入れられ、捨てられそうになったウイリーを見つけます。
嫌われ者のねずみと人気者のおもちゃのねずみという、境遇の全く違う二匹が、初めてできた友達に喜ぶ様子にうれしくなります。
そういえば、友達ができる時ってこんな感じでした。いくら話しても話し足りなくて、違いがあってもそれも楽しい!アレクサンダとウイリーは、一瞬にして友達になり、違いを受け入れながら仲良くなります。ある日状況は逆転しますが、友達を思う気持ちが友達を救います。
ねずみの可愛らしい友情のお話と捉えられますが、短い文の中に、アレクサンダの様々な感情の移り変わりが書かれています。友達を好きな気持ちと羨ましい気持ち、助けたい思いと自分の願い。
自分のいる環境がどんな意味を持つのかも考えさせられ、読み手の成長とともに、アレクサンダへの共感が増してきます。
読む時期によって見えるものが違ってくる、メッセージ性の強い絵本だと思います。
アレクサンダとぜんまいねずみ
レオ=レオニ:作 / 谷川俊太郎:訳
好学社
リンク