幸せな変身!『どろんこハリー』
黒いブチのある白い犬のハリーは、お風呂が大嫌い。ある日、お風呂にお湯を入れる音がしてきたので、急いでブラシを庭に隠して逃げ出しました。
街に出たハリーは、工事現場で遊び、機関車の橋の上でススだらけになり、石炭トラックの上で遊んで真っ黒になりました。今では白いブチのある黒い犬です。
遊び疲れて家に帰ると、家の人は誰もこの真っ黒な犬がハリーと気づきません。
逆立ちしたり、宙返りしたり、いつもの芸をたくさんしても全然だめ。ハリーは悲しくなってとぼとぼ外へ出ようとしますが、突然、庭に隠したお風呂のブラシを思い出します!
古今東西、老若男女、変身するお話はみんな大好きですね。仮面ライダーやプリキュア、シンデレラや美女と野獣もそうですし、水戸黄門も立場が変わるという意味では変身の部類?
ギャップが大きければ大きいほど爽快感がありますが、このどろんこハリーの変身も、小さな子どもにとっては大きな変身なのかなと思います。
だって真っ黒になったとは言え、家族が誰も自分に気がつかないなんて、悲しすぎます。家族との幸せなコミュニケーションだった「芸」も、自分だと気づいてくれる方法にならないなんて。挙げ句の果てに、家に入れないなんて…。
遊んで帰ったハリーの境遇が気の毒すぎて、子どもだって同情します。
息子は何度も「ハリーなのにね。」とつぶやいていました。
でもそこで必殺技のお風呂が出てきます!
家を出なければならなかった、かわいそうなハリーを思うと、変身後の爽快感は抜群です。「よその犬」から「うちの犬」への変身は、子どもも知っている幸せの大変身だからです。
どろんこハリー
ジーン・ジオン:文 / マーガレット・ブロイ・グレアム:絵 / わたなべしげお:訳
福音館書店