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親子で読んだおすすめの絵本・児童書を紹介します。

他の子とは違う?『スイミー』

小さな魚のスイミーは、たくさんの兄弟と暮らしています。みんな赤いのに、スイミーだけ真っ黒。でも泳ぐのがとても早かったので、スイミーだけマグロに食べられずに逃げました。

ひとりぼっちで泳いでいると、今まで見たこともなかった海の景色に出会います。大きな伊勢海老や昆布とわかめの林、長い長いうなぎなど。そしてスイミーと同じような、小さな赤い魚の群れに出会います。大きな魚を怖がっている仲間たちに、スイミーはあるアイデアを提案します。今度こそ大きな魚に負けないように、みんなで力を合わせる方法です。

 

自分の中の遠い記憶では、スイミーは一匹だけみんなと違って真っ黒で、でもそれを生かして活躍する、というお話だったのですが、大人になって読んでみると、ひとりぼっちになってから海の中をさまよって、色々な生き物に出会う部分が数ページ続くことに驚きました。

親になり子どもを育てる中で、周りとの違いは無意識に意識していることも多く、子どもが赤ちゃんの頃から、出来ることが他の子よりも遅いような気がしたり、違うことをしているような気がしたりしていました。

娘は早生まれなので、なおさら、母である私が気にしすぎていたのかもしれません。

 

スイミーを見ると、そんな他の子とは違う、たった一人の我が子のように思えます。周りと違くて、いい所も光って見えて、でもとても心配。そのスイミーが一人で海を泳いで、今まで知らなかった世界を見て、気づき、新しいコミュニティーに入って行くという、魚も人間も同じ「子どもの独り立ち」が描かれているように思えました。

レオニがページを多く割いたのも、そこが重要だったからなのかな、と。

親に出来ることは、たくさんの世界を見せて外へ送り出し、子どもを信じてあげることくらいなのかなと、寂しいような、でも頼もしいような、ちょっと複雑な気持ちになります…。


スイミー -ちいさな かしこい さかなの はなし
レオ=レオニ:作 / 谷川俊太郎:訳
好学社