matsubockrin 子どもの本棚

親子で読んだおすすめの絵本・児童書を紹介します。

しろぶたくん『なにをたべてきたの?』

お腹が空いたしろぶたくんが、食べ物を探しに行きます。

赤いりんご、黄色いレモン、緑のメロン、紫のぶどうを食べて、しろぶたくんの体の中にはきれいな色の玉が並びます。

まだまだお腹が空くので、ぴかぴかの石鹸を見つけて食べると、お腹の中で泡がぶくぶくしてきました。

 

きれいな線で描かれたしろぶたくんのお腹の中で、食べたものが鮮やかな色の玉になっています。

最初はイライラ怒っている様子だったのに、ひとつふたつ食べていくと、しろぶたくんの表情も明るくなって、元気が出てきます。

そして食べた物が増えると、体も伸びて、大きくなっていきます。

とてもシンプルで、「食べたら増える」という繰り返しが、子どもにもわかりやすく、喜ばれます。

 

食育への声掛けにもぴったりで、赤いりんごを食べたしろぶたくんを見ながら、娘に「今日はいちごを食べたね」とか、緑のものは「ブロッコリーを食べたね」と話しかけると、うんうん!とうれしそうにお腹をさすって聞いていました。

「せっけんは食べたっけ?」と聞くと、真顔で固まって困惑していました。

それでもしろぶたくんがせっけんを食べて、泡を出しながらころころ坂道を転がっていく場面は、何回見てもキャハキャハ大喜びでした。 


なにをたべてきたの?
岸田衿子:作 / 長野博一:絵
佼成出版社

やっちゃダメって言ってるのにやっちゃう話

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11歳の娘は小さい時から落ち着きがありません。

ちょこまかしていて、公園に行ったら、瞬きしている間にどこかへ行ってしまいます。

さっきまでそこで遊んでいたのに、振り向いた瞬間、別の場所で遊んでいたりします。

 

大きくなった今もあんまり変わらず、もう6年生なのに、公園に行くと水に放たれた魚みたいにいなくなります。

目に入ったものは何でも触ってみたくなっちゃって、宿題を取りにランドセルまで行ったのに、戻ってくる途中にあるもの全部に引っかかって、なかなか戻って来ません。

 

調理中のフライパンをちょっと揺すってみたいけど、「危ないから触らないでね」と母に言われても、そっと手を出し、揺すって怒られます。

弟と喧嘩して、頭にきて手を出そうとしているので、母が「叩いたらダメ」と言っても、直後にそっと手を出し、弟を小突いて怒られます。

 

ほんとにもう、怒られに来てるとしか思えません。

糸を引っ張ったら穴が開きそうな服も、あえて糸を引っ張って穴を開けてしまい、聞くと「やってみたかったから」…。

 

小さい時は「好奇心旺盛でよし!」と思っていたけれど、大きくなってもやめられないのは、さすがに心配になります。

いつか、なにか、しちゃうんじゃないかとか。

「押しちゃダメ」ってボタンを、そっと押してしまうんじゃないかとか。

本気でそんな心配をしていたら、まさに娘の本かと思うくらい、ぴったりな絵本を見つけてしまいました。

 

 

かわいいモンスターが、大きなボタンを「ぜったいにおしちゃダメ」と忠告します。

「がまんして」とか「考えてもダメ」と言いながらも、「でもおしてみたいよね?」と誘惑し、ついには「おしちゃおう!」と迫ります。

 

こんな風にならないといいなと思いつつも、ボタンを押すまでの葛藤がすごくよくわかります。

ダメって言われると、余計にやりたくなっちゃうんですよね。

大人だってやっちゃうかも。

「やっちゃダメ」は「やってみたい!」に変わる、魔法の言葉なんだなと、ちょっと反省しました。

だからって、ダメなものはダメなのですが…。

昔も今もおもしろい『はれ ときどき ぶた』

最近はお姉ちゃんの影響で、角川つばさ文庫の『怪盗レッド』や『少年探偵 響』ばかりを読んでいる3年生の息子。

図書館へ行ってもつばさ文庫ばかりを借りてきて、児童書は借りるものの、あまり手をつけません。

アニメのコナンも大好きだし、冒険や推理ものはおもしろいのだと思います。

ライトノベルは文章も読みやすいし、挿絵もアニメ的でなじみやすい。

夢中で読んでいる姿を見ると、それもいいかなと思うのですが、母としてはまだまだ児童書も読んで欲しいのです。他にもおもしろい本はいっぱいあるよ、と。

 

そんなプチ刺激に慣れた3年生が読むのにぴったりかなと思ったのが、『はれときどきぶた』です。自分が小学生の頃の定番で、特に男子は必ず誰かは図書室で借りていたように思います。

インパクトのある絵と題名は息子も知っていましたが、なかなか読むまでにはなりません。そこで久しぶりの読み聞かせをしてみました。

 

主人公の則安くんがお母さんに日記を読まれてしまい、悔し紛れに明日の日記を書き始めます。めちゃくちゃな事を書けばお母さんもびっくりすると思っていたのに、なんと書いた事が本当に起こってしまいます。

 

息子は初め、上の空で聞いていたような感じでしたが、最初の不思議な出来事で、明らかに「ん?」となっていました。「ほんとになった…」とニヤリとしています。

次の日の日記の “鉛筆の天ぷらを食べる”ところでは、「えええ~!」と良い反応。

隣で『怪盗レッド』を読んでいたお姉ちゃんも覗いてきました。

 

金魚が飛んだり、お母さんの首が伸びたりと、予想の斜め上をいく出来事に子どもたちも引き込まれ、クライマックスのぶたが降ってくる場面では大はしゃぎ。

空一面にぶたがぎっしり詰まって、今にも降り出しそうな空模様のイラストにも大笑いです。やっぱりぶたの威力ってすごい!

 

今時の文章に読み慣れた子どもたちも、一瞬で本の世界へ引き込まれ、楽しんでいました。

昔の子どもも今の子どもも、おもしろいと思うものは一緒なんだなとうれしくなります。


はれ ときどき ぶた
矢玉四郎:作/絵
岩崎書店

恐竜も人間も同じ舞台『せいめいのれきし』

宇宙に太陽が誕生し、地球が出来、生命が誕生して、現在の私たちの生活になるまでの歴史を、わかりやすく説明してくれます。

第1幕から第5幕までの劇仕立てになっていて、初めは三葉虫などがいた古生代、次に恐竜の生きた中生代、そして哺乳類が台頭してきた新生代へと舞台が変わっていきます。

人間が登場してからは、作者の住むアメリカ大陸へと舞台が移ります。

開拓者が土地を整えていくところから、人が家を作り、家族を作っていく一生を追い、次に一年の季節の移り変わりから一日の日の移ろいと、時間の単位が小さくなっていきます。

太陽が生まれた頃から恐竜の生きた時代を経て、自分たちが生きる一日につながっていく事で、地球の歴史が自分につながっている事を感じられるのかもしれません。

 

6歳のころ息子が恐竜大好きになり、本や図鑑でとても熱心に見ていました。

恐竜の生きた時代を中心に、恐竜以前の時代、絶滅した後の時代もよく知っていますが、そこから現代まで、つながって考える事はなかなかできません。

『せいめいのれきし』は、その知識の点と点を、一本の線でつなげてくれたような気がします。

 

絵本の体裁で、絵も可愛らしくやさしい語り口ですが、扱っている内容が少し難しいので、息子には8歳の誕生日プレゼントにしました。

恐竜や虫、植物などが大好きで、その分野に興味のある子なら、もう少し小さくても楽しめるかもしれません。


せいめいのれきし
バージニア・リー・バートン:著 / いしいももこ:訳 / まなべまこと:監修
岩波書店

風まかせの旅人『ふらいぱんじいさん』

大好きな卵を焼く仕事を、新しいめだまやきなべにとって代わられたふらいぱんじいさんが、自分の役目を探すために外の世界へ飛び出します。ジャングルでヒョウやサルに捕まったり、海で嵐に巻き込まれたりと大冒険をしながら、自分が必要とされる場所を探しに行きます。

 

ふらいぱんじいさんの意思とは関係なく巻き込まれていく冒険が、次から次へと展開して子どもたちを飽きさせません。狭い台所しか知らなかったじいさんが旅で出会う景色は、砂漠や海などスケールの大きなものばかりです。大きな場所で小さなフライパンが四苦八苦している様子がおもしろく、途中で出会う生き物もまた、フライパンの事を知らないので、勘違いが生まれます。

でも風まかせの運命を受け入れて面白がり、順応していくフライパンじいさんはすごいなあと思います。じいさんなのに、柔軟です。

そうして流れ着いた場所で、求められた事が次の役割になるという、大人もちょっと考えさせられるお話です。

娘に読んだ時、「『とんでったバナナ』みたい!」と笑っていました。バナナがつるつる飛んで、色々な所を渡っていく歌です。どちらも主人公が予想できない流れに身を任せ、飄々と渡り歩くお話に、柔軟な子どもたちはワクワクするのだろうなと思います。


ふらいぱんじいさん
神沢 利子:著 / 堀内 誠一:絵
あかね書房

友情だけじゃない『アレクサンダとぜんまいねずみ』

人間に嫌われ、いつも追いかけられているねずみのアレクサンダは、ぜんまい仕掛けのねずみウイリーに出会い、友達になります。ウイリーは大好きだけど、人間に可愛がられる彼が羨ましく、自分もぜんまいねずみになりたいと願います。

ある日アレクサンダは、庭の隅にいる魔法のトカゲの話を聞きます。満月の夜、紫の小石を持っていくと、生き物を他の生き物に変えてくれるのだそうです。

アレクサンダはぜんまいねずみになりたくて、紫の小石を探しますが、見つかりません。すると、物置の隅で箱に入れられ、捨てられそうになったウイリーを見つけます。

 

嫌われ者のねずみと人気者のおもちゃのねずみという、境遇の全く違う二匹が、初めてできた友達に喜ぶ様子にうれしくなります。

そういえば、友達ができる時ってこんな感じでした。いくら話しても話し足りなくて、違いがあってもそれも楽しい!アレクサンダとウイリーは、一瞬にして友達になり、違いを受け入れながら仲良くなります。ある日状況は逆転しますが、友達を思う気持ちが友達を救います。

 

ねずみの可愛らしい友情のお話と捉えられますが、短い文の中に、アレクサンダの様々な感情の移り変わりが書かれています。友達を好きな気持ちと羨ましい気持ち、助けたい思いと自分の願い。

自分のいる環境がどんな意味を持つのかも考えさせられ、読み手の成長とともに、アレクサンダへの共感が増してきます。

読む時期によって見えるものが違ってくる、メッセージ性の強い絵本だと思います。


アレクサンダとぜんまいねずみ
レオ=レオニ:作 / 谷川俊太郎:訳
好学社

もしもあったら何をしよう?『おおきな きが ほしい』

庭に大きな木があったら、はしごをかけて登っていって、自分だけの小屋を作りたいな。台所でホットケーキが焼けるし、高い所は見晴らしもよくて、夏は涼しいかもしれない。秋は落ち葉の掃除を鳥が手伝ってくれるかもしれないし、冬はリスがくるみを持って遊びに来てくれるかも。

そんな「もしも」の子どもの夢が、たくさんつまったかわいいお話です。

 

男の子が大きな木に登って行く所から、ページの向きが変わります。

左右の見開きページから上下の見開きになって、ページをめくる度に上へ上へと登って行きます。

登った先には空の広がりがあり、下を見れば小さくなった家とお母さんがいます。

まるで本当に大きな木に登ったかのような気分になり、自分だけの木の家では何をしようか考えるだけでワクワクします。

空想の中で遊ぶ楽しさを、工夫いっぱいに見せてくれる本です。


おおきなきがほしい
佐藤さとる:文/村上勉:絵
偕成社

やってみたい!が いっぱい詰まった『ひとまねこざると きいろいぼうし』

今では“おさるのジョージ”として有名な、ひとまねこざるの1作目です。黄色い帽子のおじさんに連れられて、アフリカから街へやって来たジョージが、次から次へと騒動を起こします。

船ではカモメの真似をして飛んでみたら海へ落っこちて、おじさんの家では電話がおもしろくて消防車を呼んでしまい、怒られて牢屋に入れられてしまったけれど窓から抜け出し、電話線を伝って風船の束で空を飛んで行きます。

目の前の事、目に見えた事を何でもやっちゃう。誰かに似ていると思ったら…うちの子です。

さすがにカモメの真似をして飛んだりはしないけど、気になったものについつい手を出してやってみたくなっちゃうのは、子どもたちにそっくりです。

お話の展開も早く、短い話の中でくるくる場面が変わります。きっとジョージや子どもたちの興味も同じで、目に映る事や耳に聞こえる事全てがおもしろく、止まってなんかいられないのでしょう。

子どもたちは何でもやってしまうジョージを羨望の眼差しで見て、大人たちは何でも受け入れる黄色い帽子のおじさんに、尊敬の眼差しを向けずにはいられません。


ひとまねこざると きいろいぼうし
H.A.レイ:作 / 光吉夏弥:訳
岩波書店

古き良き昔話『3びきのくま』

女の子が森の中で迷子になってしまいました。帰り道をいくら探してもみつかりません。すると一軒の小さな家をみつけました。中に入ってみると、テーブルの上には大きいスープ、中くらいのスープ、小さいスープが置いてありました。女の子は小さいスープを食べ、小さいイスに座って、小さいベッドで眠ってしまいました。でもそこはクマの親子の家だったのです。

 

緑の表紙に3匹のクマが並ぶ姿はインパクトがあり、中を開くと挿絵がまた迫力満点です。子どもの頃はクマがちょっとリアルで怖かったけど、絵本全体から漂う外国の雰囲気や、心地好さそうな家の中が、なんとなく素敵だなと思っていました。

物語は非常に素朴で、大・中・小の物の比較が、とてもかわいらしく、リズムよく繰り返されます。昔話では3回の繰り返しがとても多く、3人兄弟の末っ子や、3つの願い事など、3つ目でお話が展開していくことが多いのですが、『3びきのくま』は、まさにその馴染みのある展開です。だからこそ、クマが怖かろうとも、異国情緒が溢れていようとも、子どもは安心してお話の中に入っていけるのだと思います。

 

大人になってから娘の為に本を買い、よくよく見ると「トルストイ作」となっていました。あのトルストイ? 確かにクマの名前はミハイル、ナスターシャ、ミシュートカとロシア風です。

ロシアに伝わる昔話をトルストイが再話したのかなと思っていたら、もとはイギリスに古くから伝わる民話を、トルストイが翻案したのだそうです。

図書館などで注意して探してみると、確かにイギリス版のお話もありました。

日本ではこのトルストイ版が有名ですが、ちょっと不思議なルートです。


3びきのくま
トルストイ:文/バスネツォフ:絵/おがさわらとよき:訳
福音館書店

初めての 絵探し絵本『きんぎょが にげた』

大きな金魚鉢から、きんぎょが一匹逃げました。カーテン、お花、キャンディなど、日常にある物の中に逃げ込んで、どこへ行ったか探します。小さな子ども向けの、かわいい絵探し絵本です。

 

五味太郎さん独特の色彩が紙面いっぱいに広がっていて、眺めているのも楽しくなります。初めは似たような形、似たような色から探していきますが、そのうち部屋の風景の一部になっていたり、たくさんのおもちゃの一つになっていたりと、だんだん物に紛れていくと、意外と大人も迷います。

色とりどりの物の中に入っても、きんぎょが浮かずに馴染んでいるのは、紙面全部の色のバランスがいいからなんだろうなと思います。安定の色合いを、安心して子どもに見せられ、かつ、ちょっぴり目の錯覚なども楽しむ事が出来る、かわいいトリック本です。


きんぎょが にげた
五味太郎:作
福音館書店